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京都芸術大学 × 京都市立芸術大学
KUA × KCUA
物語に騙られない語りのために
「物語に騙られない語りのために」
京都芸術大学 / 京都市立芸術大学
三浦宗民 / 中村さやか
久保廣汰 / 高橋レイン
森田妃虹 / 田中茜乃介
ふいに沈黙が訪れることをフランス語では「天使が通り抜けた(Un ange passe)」と言うそうだ。ときおり私のもとに訪れるこの沈黙は、はたして天使なのだろうか。
私たちはしばしば、性別や国籍、宗教といった属性によって隣人を語りすぎる。それらのまなざしの型は、他者を理解する手がかりとなる一方で、個々の生をあらかじめ舗装された物語へと押し込めてしまう。気づけば望みもしない対立の構図に組み込まれ、自らの属性を名乗ることで境界線を引かされる、あの抗いがたい引力に覚えはないだろうか。自らの意思とは無関係に分断の片側に置かれる無力さに口をつぐむとき、それでも私たちは別の道へと歩み出すことができるのだろうか。
同じと見なされた者だけを「私たち」と呼ぶのだとすれば、それは無力さが敷いた道を進むことにほかならない。既存の「私たち」という型が機能不全に陥っている現在において、分かたれた者同士はどのような想像力によって出会い直せるのだろうか。差異を抱えたままの私たちはいかにして可能なのだろう、という問いが、この企画には最初から横たわっていた。
本展覧会では、各大学から二名ずつが連れ立ち、「語り合い」の傍らにある「語れなさ」が灯すかすかな光を手がかりに、それぞれの私的な場所から制作のプロセスを共にしている。その道のりから見出されてきた友愛性とは、端的に言えば、ふたつの視線が並ぶ先に世界を重ねてみることで、そして混じり合う時間のなかにとどまり続けることだった。それは単に「違いに目を凝らす」こととは違っている。むしろ、互いの原風景を調律することで得られる「もうひとつの視力」にいたるような経験だ。どのような他者とのあいだにも、そのような弱い通路が生まれていた可能性に思いを馳せるとき、私たちはようやく、暗闇の居心地の悪さを友にできる。
もし、天使のもたらす沈黙が、無力さではなく別の何かで満たされていく時間の喩えだとしたら、天使が通り抜けていったその場所には、残響を通路とすることで見えてくる明るさがあるはずだ。この暗闇に点る、いくつかの異なる色の光が交差するあいだからも、幾度も語り損ねられてきた「私たち」の兆しは、朧げに立ち現れはじめている。
《 KG+ACADEMY Project 参加プログラム》
堀川御池ギャラリー
〒604-0052 京都府京都市中京区押油小路町238―1
地下鉄東西線「二条城前」駅2番出口から徒歩3分
Open: 4.18 Sat.–5.17 Sun.
Closed: Mon.
11:00 - 18:30
*最終入場は18:00 | The last entry is at 18:00
入場無料 | Free
キュレーター | Curator: 堀井ヒロツグ | Hirotsugu Horii