ソネソラ、成瀬凜

sonesora, naruse rin

「燃する象」は、畏怖すべき存在に触れる行為を主題とした映画作品である。本作において火は、圧倒的な質量と危険を内包する象徴的存在、すなわち「The elephant in the room 」として機能する。その不可視性にもかかわらず、光や影、音響によって火の気配を喚起し、観客を「目を逸らし続けてきたもの」へと向き合わせる装置である。個人の記憶、失われた風景、あるいは社会的問いを、火と象の比喩的構造が代弁し、これらが再認識されるべき対象として浮かび上がる。映画という形式を拡張し、空間体験としても機能する本作は、観る者の感覚を揺さぶりながら、触れることを忌避されてきたテーマに能動的に接触する場を提供する試みである。