A04
レオナール・ブルゴワ・ボリュー
Léonard Bourgois-Beaulieu
Les corps lucides (the lucid bodies)
私の制作は、時間の経過や具体的な形で表出する社会的・生態学的問題をテーマとしている。人間の姿を描写したり自然と繋がったりするための経路として、実験的な写真を利用する。
私は10年間、流動的なアイデンティティを持つ人々を撮影してきた。その変化に寄り添い、そこに物質的な実体性を持たせるために、いくつかの写真技術を開発した。まずアナログ写真を撮影し、その上に独自に調合した薬品を塗りつけていく。その薬品は、乳剤の持つ画像を定着させる効果を無効にする。このプロセスは写真の物質性を解体し、オリジナルの「ネガフィルム」に封じ込められていた別の形態を出現させる。予期外の反応も作用して、最終的に絵画的な写真が生成される。それは、正確なディテールが失われた私たちの記憶にも似ている。記録の媒体である写真に、私は永久運動による変化を提示したい。ある時点でネガフィルムをスキャンすることで変化を止め、完全に抽象化する前に、もとの被写体の痕跡をそこにとどめる。
最新のシリーズ《the lucid bodies》では、アイデンティティに問題を抱え、社会的に不可視化された人々を撮影し、人々の体が光を放っているように見せるために、光学的ソラリゼーションの技法を取り入れている。ネガフィルムの表面で微生物を培養する実験も続けてきた。これにより、写真の表面に第二の「肌」が形成され、写真を時間的拘束から解放する。写真プロセスに生命体が関与することで、自然との間に優劣のない平等な関係性が生まれる。写真が過去の記憶ではなく身体となり、生命をまといはじめるのだ。
レオナール・ブルゴワ・ボリューはパリとスリジエを拠点に活動するアーティスト。アイデンティティの問題に関心を持ち、人々の顔、身体、時間、記憶、そして絵画をテーマに実験的な作品を制作する。事故や偶然を取り入れながら、常に変化し続ける現実の姿を可視化することを目指す。彼の作品はいくつかのプライベートコレクションに収蔵されており、最近ではartnetが、パリフォトフェアで注目すべき7名の一人に彼を、ADマガジンも20名のお気に入り作家の一人として紹介している。
堀川御池ギャラリー
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