A05
ガレス・フィリップス
Gareth Phillips
Ligatures of Ivy
《Ligatures of Ivy》は、メンタルヘルスと孤独をテーマとした、現在進行形のプロジェクトである。もともとは一冊のフォトブックとして構想したもので、ガレスと彼の父親による共同作業が起点となっている。1980年代の英国における脱工業化の波の中で、事業に失敗した父親の悔恨と無力感がこのシリーズのテーマとなっている。失業者となり、家族を経済的に支え保護するという役割を果たせなくなった父親は、だんだんと自らの殻の中に閉じこもるようになっていく。そして、30年間、失敗への恐怖心と家長としての無力感が鬱病として現れていた。最近になって、ガレスの父親は生死にかかわる重病の診断を受けた。それにより、抑えつけていた感情が溢れ出すようになり、父親は神経衰弱状態に陥ってしまった。このプロジェクトで、ガレスは30冊のフォトブックのマケットを制作した。そのすべてが父親の自宅でのルーティンを記録しており、家の周囲の自然環境を象徴するような実験的なモンタージュやコラージュも含まれている。これらのマケットは、その実験性によって深みのある視覚体験を生み出し、より広範な社会・経済的背景のニュアンスを伝えるものとなっている。この新たな現在進行形のフォトブック・インスタレーションは、孤独感や「男らしさ」への社会的プレッシャーにまつわる思考を鑑賞者に促す。この形式により、鑑賞者はページの奥深くにまで分け入り、現代社会の状況に対して個人的な思いをめぐらせることができ、フォトブックの領域をも押し拡げる。常に成長を続けるこのプロジェクトに、今回の展示でまた新たな1章、新たな1冊が加わることになる。
フォトグラファーのガレス・フィリップスは、フォトブックやマケット、インスタレーションを主な作品発表の形態としている。フォトブックをオブジェや彫刻、インスタレーションとして捉えることで、彼はフォトブックの現代的な再定義を試みている。多くの展覧会を行い、受賞歴も多数。英国ウェールズ在住。現在はReflexions Masterclassに参加している。
堀川御池ギャラリー
〒604-0052 京都府京都市中京区押油小路町 油小路通御池押油小路町238―1
地下鉄東西線「二条城前」駅2番出口から徒歩3分