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下坂厚
Atsushi Shimosaka
記憶とつなぐ
記憶は消えていくものではない。
それは、かたちを変えながら、私たちの中を静かに流れ続ける存在である。
彼にとって写真を撮るという行為は、
その流れの中にそっと光を置くことに似ている。
それは、過去を閉じ込めるためではなく、
いまこの瞬間に息づく記憶を呼び覚ますための祈りのような行為だ。
カメラの前で出会う風景には、
失われた誰かの声や、日々の仕草の名残が息づいている。
彼はそこに、「生の余韻」を聴こうとする。
認知症とともに生きるなかで、記憶の不確かさを通して、
彼はむしろ、「いのちの確かさ」を見いだした。
忘れることは断絶ではなく、
世界と新しい関係を結びなおす行為でもある。
写真とは、その結び目をかたちにすること。
光が触れた瞬間、記憶は他者へ、そして未来へと手渡されていく。
《記憶とつなぐ》──
それは、下坂厚というアーティストがこの世界にそっと投げかける、
静かな祈りの名である。
photo atelier&gallery 雫
京都府京都市北区紫野東藤ノ森町11-1
Open: 4.18 Sat.–5.17 Sun.
Closed: Thu.
12:00 - 16:30
入場無料 | Free