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片岡俊
Shun Kataoka
S U I T E N
和歌山県出身の博物学者・生物学者である南方熊楠の思想の一つに「萃点(すいてん)」という言葉がある。「様々な因果系列、必然と偶然の交わりが一番多く通過する地点」という意味を持ち、特に〈異なるものの交流する地点〉を呼ぶ言葉である。以前より、人と自然というめぐり流れるものの交差に関心を引かれていた私は、その二つが交わる地点を「萃点」と捉え、熊楠が歩いた和歌山県を中心として各地を写真に撮っている。 人と自然が影響を与え合う。そして新たな形や事象を生み出す。言葉にすれば平易に読めてしまうその影響の交差点は、そこにある石を裏返した跡にこそ広がっている。距離を置くことも難しく影響を及ぼし合う二つの存在は、一望することのできない点として私を強く惹きつける。次の一点に向かう一歩、そのひと踏みの真下こそ逃さず見届けたい。点を辿る軌跡は重なり合い杳杳と連なっている。
今宮神社御旅所
〒602-0084 京都府京都市上京区大宮通鞍馬口上る若宮横町136