73
牧野友子
Tomoko Makino
何が良かったのかなんて、にんげん終わってみないとわからないものよ
孫の中学受験校を決める際、母がふと「何が良かったのかなんて、 にんげん終わってみないとわからないものよ」と呟いた。 全く違うことに対し放たれたにも関わらず、この言葉は私に死後の世界について考えるきっかけをもたらした。 父の死後、核家族だった我が家には仏壇に手を合わせる習慣ができた。日々形式的な宗教行事をこなすうちに「いったいこの行為は何なのか」という疑問を抱くようになった。 当たり前に行っているこの習慣は父への弔いにつながっているのだろうかと。 遺品を箱にしまいこみ、大切にすることも弔いの一つだ。 しかし遺品を箱から出し、故人に想いを馳せることもまた、弔いの一つだろう。 過去の後悔も未来の行動も現在の選択も、何が良かったのかなんて、終わってみないとわからないのだから。 そんな想いを抱きながら、私は私なりの弔いを始めた。
GOOD NATURE STATION 4F GALLERY
〒600-8022 京都市下京区河原町通四条下る2丁目稲荷町318番6