小池貴之

Kino Koike

2023年1月現在、ロシアとウクライナは戦争状態にある。
ロシアは日本を非友好国に設定、事実上ロシアへの自由旅行ができない状況になってしまった。
作者・小池は2018、2019年、未知の国を知りたいという好奇心からシベリア鉄道でロシアを旅した。
旅の途中で何度も聞いた「Домой (ダモイ)」という言葉に、第２次世界大戦後にソ連・シベリアに抑留された人たちの壮絶な体験の歴史を重ね、旅の序盤は複雑な負の感情を抱く。北海道で育った小池は幼少期から日本とロシアの戦争の記憶や領土問題について聞かされており、より強く感じた。
しかし、旅で出会った労働者、軍人、商人など様々な人物との交流を通じ、ロシアに対するステレオタイプな負の印象が消え、「Домой (ダモイ)」の本来の「故郷や家庭、帰る」という意味の温かさを知る。
小池は、旅先での対話し撮影した人々・風景の記録から、国家という枠にとらわれない人と人との絆や愛、自由を写真で表現しようと試みる。他者を知り、理解することが戦争終結への一歩になることを願いたい。

北海道函館市生まれ。立命館大学大学院理工学研究科情報システム学専攻修士。写真メディアの記録の役割に注目し、時間や場所の歴史・記憶を物体に定着させる作品を制作している。多くのプロジェクトは、ゼラチンシルバー・鶏卵紙・湿板写真等のアナログ技法を用いている。モノとしての写真の価値を高め拡げるための活動もしている。