KG+ 2022

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西村勇人

Hayato Nishimura

Mounds

このシリーズでは、現代人の暮らしの傍らでそれとは無関係に存在しつつ景色のなかで交ざり合う古墳に着目して、歳月の積層の上に生きる人間のありようを現出させることを試みる。古墳は十数世紀前に権力者の眠る墓として象徴性も持ちつつ築造されたが、現在に至る過程で尊厳を保持されないかたちで毀損され、または都市のうちに埋もれ静安を保てなくなっているものが少なくない。ごく近年に文化財としての価値が認識され保護・保全の対象となってきたが、すでに進んだ都市化のために家屋・公共施設や公共インフラなどとの間に緩衝もなく墳丘が残る景観は、時間も意識も大きく隔たる人間の営みが隣り合う奇異な相をなしている。今回は、京都市および近郊の古墳も含めて展示する。 【ギャラリーからのコメント】西村勇人は、前述のような古墳を約300基巡り歩き、記録してきました。考古学者ではない西村氏の行為は、長い年月沈思黙考してきたかのような対象(古墳)の側に立った視線にも感じられます。この先も変化し続ける社会は、もしかしたら機能不全、人類の絶滅へとつながるかもしれません。人影がまったくない作品群が、誰もいなくなる近未来にも見えてきて、100年後200年後の現実の光景なのではないかと想像してしまいます。西村氏の視線は、その意味で、人類に向けられた宿題なのではないかと思うのです。 本展では、シンプルに額装された写真作品が淡々と並びます。古墳が映る写真群は、多様な立場の鑑賞者から、日本史・日本の近代史をめぐる考察、祭祀とのかかわり、現代の不動産をめぐる逸話など、さまざまな発言を引き出してきました。それらの多様な言葉や言説により、都会の様相や情報に埋没していた、もうひとつの現実の風景がより鮮明に立ち上がってきます。本展は、京都という歴史的に特異な土地での古墳にも着目しています。

ヴォイスギャラリー(MATSUO MEGUMI + VOICE GALLERY pfs/w)

〒600-8061 京都市下京区富小路通高辻上ル(仏光寺通下ル)筋屋町147-1

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