S1
澤田 華
Hana Sawada
避雷針と顛末
うるさい店内に充満する人々の会話や、
静かな車内に響く誰かの話し声が気になって仕方なくなったとき、
耳に入ってくる音を文字に起こして、ノートに記録してみることにした。
無理に避けたり封じたりするのではなくて、呼び込む姿勢をとることで、
健やかな気持ちを守ることにしたのだ。
ただし、その場から離れたあとも、メモは手元に残り続ける。
ページを破いて捨ててしまうことは容易いけれども、
今目の前に確かにあるものを、簡単にないことにするのは憚られた。
それは、あのときイヤホンを突っ込んで耳を塞いでしまわなかったのと同じことだ。
そういう訳でとりあえず、持て余したこのメモに目を凝らしてみることにした。
ギャラリー・パルク
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