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渡部さとる
Satoru Watanabe
ノクトクローム
古来、日本では夜に禍々しいものが跋扈し、それらは夜明けとともに消えると考えられていた。しかし現代の都市生活において、それを実感することは難しい。夜と朝を明確に分ける時間は、もはや存在し得ないのだ。
今回の屋久島での滞在では、その「逢魔が時」を感じてみたいと思っていた。
夜が明ける前、まだ闇が支配する森へと足を踏み入れる。微かに虫の音が聞こえる中、小さなライトを頼りに森を進む。足元を照らしていた光を前方に向けると、まるで丸く切り取られたように森が浮かび上がる。新月の時期にはライトを消すと、自分の手すら見えないほどの漆黒に包まれる。
やがて、空と森の境がうっすらと見え始める。虫の音がぴたりと止まり、代わりに鳥の囀りが響き始める。それが夜明けの合図だ。目を凝らすと、木々の輪郭がぼんやりと立ち現れてくる。そこに広がるのは、色を持たない世界。僕はその時間を「Noctchrome(ノクトクローム)」と名付けた。
それは、夜と朝とをつなぐ、ごくわずかな時間に現れるモノクロームの世界。花の匂いが漂い始めると、森に色が戻ってくる。そしてそれは、朝の始まりであり、地上にエネルギーが満ちていく時間でもある。
ギャラリー素形
京都府京都市中京区室町通二条下ル蛸薬師町271ー1 然花抄院室町本店内
Open: 4.29 Wed.–5.7 Thu.
Open Everyday
11:00 - 18:00
入場無料 | Free
協力 | Cooperation: ギャラリー素形、ギャラリー冬青 | Gallery SUGATA、Gallery Tosei