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黒田零
Rei Kuroda
胎内、あるいはスクリーン
本展の会場は、西陣織の一種である「黒共」を織っていた旧工場であり、現在は個人邸として残されている。〈黒共〉とは、喪服に締める帯を専門に、表裏や文様に至るまで黒一色で織られる西陣織である。明治期の姿をほぼそのまま留める木造建築は、高い天井や太い梁、土壁や天窓、三和土を備え、時間の層を内包した空間となっている。
黒田零は、この場に「循環」と「脱人間中心主義」をテーマとする写真・映像作品を展示する。明確に輪郭づけられた世界ではなく、闇の中で他の存在と溶け合い、形を変え続ける〈影〉の世界に眼差しを向けている。薄暗い空間に回転するランプシェードと、注意深く見なければ判別できない写真が配置され、鑑賞者は映像を「見る」のではなく、まるでスクリーンの内部や胎内に入り込むような感覚へと導かれる。
樹木が枯れ葉や自身の身体を他の生命の養分として循環させるように、死は終わりではなく次なる始まりでもある。生から死へと魂が移行するための儀式に用いられる喪服を生み出してきたこの空間は、まさに循環の場である。本展は、場所に刻まれた記憶と時間を通して、空間そのものの循環を体感する試みである。
西陣織「大樋の黒共」旧工場
〒602-0041 京都府京都市上京区中御霊図子町130
Open: 5.1 Fri.–5.10 Sun.
Open Everyday
13:00 - 17:00
入場無料 | Free
コネクター | Connector: イセウユ | Iseuyu