S03
中川もも
Momo Nakagawa
Clonal Images
1992年日本生まれ。京都を拠点に活動。2025年「Dior Photography and Visual Arts Award for Young Talent」にノミネートされた彼女の実践は、写真、彫刻、インスタレーションの交差点に位置している。中川はイメージを固定された表象としてではなく、有機物のように絶えず運動し続ける「生命体」として捉えている。
彼女の制作を貫く重要な概念の一つが「パントロピー(pantropy)」である。これはSF文学に由来する概念で、過酷な環境に適応するために人間の身体そのものが変異していく能力を指す。本展では、中川はこの発想を空間へと翻訳することを試みている。ギャラリーの壁面には大規模なコラージュ作品が展開し、空間には植物の形態を思わせる吊り構造が浮かび上がる。それらはまるで生きた膜のように空中に漂い、有機と無機、植物的なものと人工的なもののあいだで揺らぐ感覚のなかへと鑑賞者を導く。
彼女の制作の中心には、「クローナル・イメージ」と呼ばれる概念がある。これはクローン植物の生態から着想を得たもので、イメージが孤立した作品として存在するのではなく、その断片が増殖し、互いに連関しながらひとつの生態系のような構造を形成していく状態を指している。人類学者アナ・ローウェンハウプト・ツィンが「ポリフォニック・アセンブラージュ(polyphonic assemblage)」と呼ぶもの──すなわち、人間と非人間の双方が関わる世界生成のプロセスのなかで立ち上がる多様なリズムの集まり──のように、これらのイメージは共存し、変容しながら、それぞれを超える何かを生み出していく。
精神を身体よりも優位に置く傾向のある文化的文脈のなかで、中川はむしろ身体の知性を提示する。環境を吸収し変化していくその能力によって、混成性(ハイブリディティ)は危機ではなく、むしろ私たちが生き延びるための不可欠な条件として現れるのである。
クロティルド・モレット
HOSOO LOUNGE
〒604-8173 京都府京都市中京区柿本町412
Open: 4.18 Sat.–5.17 Sun.
Closed: 4.28, 5.12
10:00 - 18:00
入場無料
主催|Organizer: パルファン・クリスチャン・ディオール| PARFUMS CHRISTIAN DIOR