63

森善之
Yoshiyuki Mori
白の余白
夏の夜。紀伊山地の大台ヶ原を源流とする川の岸辺にいた。そこは暗室と同じように全暗の世界だった。光が消えたその場所は昼間とはまるで別の空間のように感じられた。視界を失った恐怖を感じて全身の体毛がそそり立つ。未知の世界に迷い込んだ不安が感覚を研ぎ澄ましていく。暗闇に何かが潜んでいるのではないかという怖れ。圧倒的な闇の中から立ち上がってきた白。僕には白という概念がそこに現れたように思えた。それは白が生まれ出ずる瞬間であるようにも感じられた。闇の中から新しい白が生まれ、新しい光が生まれてくる。それは静かでとても神聖な情景だった。太古に白と黒という認識は闇の中から生まれてきたように思えた。そこには色は存在するが肉眼では認識できない。モノトーンに近い抽象的とも思える具象の世界だった。
カホギャラリー
605-0981 京都府京都市東山区本町15丁目778−1
Open: 4.12 Sat.−4.20 Sun. 12:00−17:00 Open Everyday
12:00 - 17:00
入場無料