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松島星太
SHOTA MATSUSHIMA
誰かが囁くまで
2023年、アラスカの冬を訪れた。アラスカの壮大で過酷な自然の中で、雪に覆われた白い世界を写真に収めたいと思い立った。鉄道の車窓から見えてくる街並みや、遠くに広がる山々の稜線も、一面に降り積もった雪の上では幻想的な世界を映し出す。その景色の一瞬一瞬を捉えようと、カメラを構え続けた。アラスカで最も北に位置する町、バローの地に降り立った。終わりの見えない白い雪の上を歩き続け、時折足を止めると、世界から音が消えたように錯覚するほどの静寂が訪れる。何かに誘われるように、一つの窓の前で立ち止まる。しばらく眺めていると、どこからか囁く声が聞こえてくる。遥か遠くから届く、かすかな声。この土地で過ごした誰かの記憶が雪に刻まれ、風がそれをそっと語り継いでいるかのようだった。白い世界でひっそりと佇む、誰かの想いに触れたような気がした。凍てつく寒さの中、フィルムを替えようと手袋を外すと、寒さで手が痛み始めた。夕陽に染まる雪原に立ち尽くし、ただそこにあり続けることの尊さを、静かに噛み締めていた。
TORINOKI FURNITURE
Open: 5.1 Thu–5.11 Sun 13:00-19:00 Open Everyday
13:00 - 19:00
入場無料