モリッツ・ホルフェルダー

Moritz Holfelder

モリッツ・ホルフェルダーは10歳の頃から波や水面を撮り続けてきた。ただ楽しむ場所だった海は、数十年通ううちより深い感覚を研ぎ澄ませる為の場へと変化した。波のリズム、潮流、水しぶきへの感覚を育て研究を重ねる中で自然の図形的規則正しさ、憧れを抱かせるほどの脅威的パワー、波が押し砕け散る中で呼吸する生命体としての海、それらへの気付きがあった。彼は人間と水との関係を探る中、人間が海という元素の力の前では人間がいかに無防備で小さく取るに足らない存在かという感覚を表現しようとするようになった。 今回の展示は崖や断崖絶壁から撮影された遠くからの海の眺めから始まる。ギャラリースペースと能楽堂を結ぶ長い廊下では、波の形を一歩一歩リズミカルに描き、能舞台では、海岸や湖、川沿いを歩きつつ、さざ波や空を映す水面、瞑想的な水面を見下す静止した水面のクローズアップ写真で締めくくる。