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何穎嘉
Wing Ka Ho Jimmi
So close and yet so far away
もし境界線が消えたら、この場所の名前までともに消えてしまうのだろうか? そして、私自身のアイデンティティを原点に戻すべきなのだろうか?
中国南部の小さな都市に生まれ、家族の事情で2つの都市を行き来し、国境を越える度に見た景色が私に深い印象を残した。時が経つにつれ、私も旅行者から居住者へと変化し、多くの中国人と同じように、香港での新しい生活と様々な可能性を待ち望んでいた。いつから香港社会に馴染んできたのか分からないが、私には香港という場所に何とも言えない愛着を感じ始めた。
香港の北にある深圳河は、香港と中国の境界線であり、毎日何万人もの人々が仕事や家族団らんで行き交う。 英国の植民地支配が終わるに伴い、その境界線はもはや地理的な指標だけではなく、心中にあるアイデンティティを示すものであり、気軽に越えることのできない一線でもある。 時代の変化と中国政治からの侵食は、この場所を重く憂鬱な雰囲気で満たしている。不安定に彷徨いながら、現実を無視して無関心に日常生活を続けるか、自分の信念を貫こうと必死にもがくか、感傷的な気持ちを抱いて故郷から立ち去った人もいる。私は人生の気まぐれに直面するにつれ、自己のアイデンティティに疑問を抱くようになり、その境界線の定義も曖昧になりつつある。このプロジェクトは、私自身の転居体験を通して、歴史と現代社会のつながり、アイデンティティの融合と矛盾、その過程での痛み、そして香港への独特な帰属意識を表現したものである。
堀川御池ギャラリー
〒604-0052 京都府京都市中京区押油小路町 油小路通御池押油小路町238―1
地下鉄東西線「二条城前」駅2番出口から徒歩3分