田口るり子

RURIKO TAGUCHI

人は、物理的な視覚を超えた感覚を常に発動して目の前の対象物と関わっている。 この人は心許せる、許せない、これは好き、嫌い、沢山あるりんごの中からどれを取るかの選択、など、どうしてそうなのかと明確に説明できない「感じ」というものを無意識に常時フル活動させている。 ポートレートを撮るとき、相手の身長体重、性別、年齢など視覚的要素がまず先に飛び込んでくる。それらを見た上で一つづつ視覚から排除していくと、最後に目の前の「存在」そのものが見えてくる。見えてくると言うより「感じ」てくる。 相手も同じように私の存在を感じ、視線の交わりは徐々に見ているのか見られているのかわからない状態になり、私と相手は融合していく。そこに境界線はない。 私はその時間を愛おしいと思い、その存在が見たくて写真を撮っている。 私は目を開けて、あなたになる。 あなたも目を開けて、私になる。