89

松本紀子
Noriko Matsumoto
kasane #flowers
時にひいて見たり、時に近づいて見たり。 私たちは物事を、さまざまな方向から捉えることができる。 では、ひとつのものを多角的に眺め、 視覚が切り取ったそのひとつひとつを重ね合わせた時、 そこにはどんな世界が生まれるのだろうか? また、美しいものを寄せ集めた時、集合体のそれも 変わらず美しいままなのか? 本作のモチーフである花が重なり合った時、どのような美しさが 生まれるのか?(または、生まれないのか?) いくつもの表情をもつ花は、人間によく似ている。 愛おしさ、憧れ、狂おしさ、恨み、、、、、、花は、多様な感情を 重ね合わせしている。 この焦点が定まらない混沌さこそが、人生そのものではないのだろうか。
レティシア書房