81
八木 ジン
Jinn Yagi
多感な日常とパニックな夜
" マルチタスクに追われていた
ある夏の夜
運転していたらまた幻聴が聞こえてきた
ギターのエフェクターのエコーがマックスにかかったような
様々な言葉や音が耳の奥で飛び交い、
多重な声が多方面から波打ち際のように押し寄せてきた
ポジティブにもネガティブにも
自分を押さえつけた。
数秒後には何も覚えていなかった。
携帯に目を向けると
LINEアプリのアイコンの上に数百件とカウントされ続けていた
ガレージに車を停めて、ドアを強めに閉めた
重い機材をアトリエに運び入れ、
フラフラとソファに倒れ込んで
そのまま立ち上がることも携帯を見ることも出来なかった。
頭の中にタスクイメージが1秒1枚ペースで浮かんでくるが
すぐに消えていく
何からやったら良いか全くわからない。
何度も吸っているのに、
酸素を取り込めていない
苦しくて苦しくて涙が出てくる
目の前にはスモークがかかり
ピント合わせを繰り返していたが全く合わない
言葉も出てこない。
結局、友達から
もう抱えていることを全部辞めた方が良いと言われて
その日から
様々なことを断ち切った。
あれから数ヶ月経ち、
時々めまいや呼吸障害、
パニック障害のような症状はあるが
回復傾向にある
この半年、様々な心情が多彩に変化を繰り返している
見える世界も、色も形も奥行きも
裏も表も刻一刻と変わってきた
定まらない”自分”の感情は
結局 作品にも表れている
社会は自分を振り回すが
それが自然である
それで良い "
バックス画材ギャラリー
〒606-8167京都府京都市左京区一乗寺樋ノ口町11