KG+ 2022

38

大橋一弘

Kazuhiro Ohashi

ふりゆくみ  ~ふりつむひ 第二章

やがて、と予感した雪は、ついに降り積もった。 来たるべき、と観念した未来は日々現実となり、 いつしか私の暮らしを全く別の場所へと押し流す。 私たちは押し寄せる波をただ受け容れて、 一つひとつこなしてゆく他ないのだろう。 万物は絶えず流転して変わらぬものはなく、 この私というあり方も仮初めの姿に過ぎぬと受け容れて。 そうであっても、 この私の見たささやかなことを書き記したい。 銀の粒子に置き換え、 形あるものとして痕を残したい。 私の記憶が消える前に。 私の存在が消えるまでは。 そして日々は続く。 変転を続けながら。 その日々のふとした隙に聞こえる響きがある。 暗闇でしか見えぬものがある。 目にはさやかに見えねども、 確かにそこにいて聞こえた響き。 確かにそこにいて感じてた蠢き。 掌に乗る小さな古いカメラは、 日々の暮らしに寄り添って、 小さな響きと微かな蠢きを、 印画紙に掬いあげてゆく。 あのとき確かに、 そこにあった念をを祀るために。

Community Lab N5.5

〒600-8188 京都市下京区和泉町529

RELATED EVENT - 関連イベント

OTHER EXHIBITIONS - その他の展示