A7
松村 和彦
Kazuhiko Matsumura
心の糸
「認知症の人と認知症でない人は見える景色が違う」
ある男性当事者がそう言った。
認知症の人は、病気などで脳にダメージを受け、記憶や言語、知覚、思考などの機能が低下する。
それまでの日常生活が、少しずつではあるが変わっていく。
失う悲しみは心に影を落とす。
作家はこの展示を構成する4つの取材で、それでも光を見つける人たちに出会った。
認知症の症状は、脳の機能低下だけが引き起こすわけではない。
その人の内面や周囲の環境が深く関わっている。
人とつながり、自分の人生を歩めれば、進行や症状は穏やかになる。
高齢化が進み、あなたの身近な人が認知症になる時代がすぐそこまで来ている。
たとえ見える景色が違っても、認知症の人とつながることが「薬」になる。
誰もが「薬」になれる。
そして、理解という「薬」が社会に広まれば、私たちの暮らしのあちこちに温かな光が差し込んでくる。
経歴
1980年生まれ。2003年、記者として京都新聞社に入社。05年写真記者となる。「人生」をテーマに作品制作に取り組む。写真集に京都 の芸舞妓の人生を描いた「花也」(14年、京都新聞出版センター )と、個人的な作品として取り組み、家族の生と死を通じて命のつなが りを描いた「ぐるぐる」(16年、自主制作)がある。前作「見えない虹」は新聞連載(その際のタイトルは「こんなはずじゃなかった」)で、 日本医学ジャーナリスト協会賞と坂田記念ジャーナリズム賞を共同受賞。現在、認知症の取材に取り組む。
くろちく万蔵ビル